ずっと続けてきた塑像を卒業して心新たに木彫で作品を制作することに心躍らせていました。
とりあえず何も分からず、何も持ってないところからのスタートです。楠は小田原に買い付けに行きました。
アトリエに運び入れて、マケットを参考に材にチョークでデッサンを入れてみます。
大分はみ出しますが、足りない部分はどんどん足していく感じですね。

チェーンソーでいらない部分をカットしていきます。チェーンソーはマキタの安いやつを使ってましたがこの後何年か木彫を続ける中で3回くらいモーターを焼き付けてしまい、修理を重ねていました。(修理にも時間がかかるので、もう壊れるのを見越して2台使いしながら壊れて修理に出しても仕事が滞らないようにしていました)その後結局嫌になって高価なSTIHLのチェーンソーに買い換えました。そうしたらモーターのパワーが断然強くて作業も早くなったし、モーターが焼き付くこともないしで、差に愕然としました。

横から見た時の輪郭に沿ってカット。

顔の部分を寄木するためにカンナがけをして平面を出しています。この時はまだ電気カンナを持ってなかったので手作業ですね。そういう地道な作業も新鮮で楽しんでました。

まず胸元に足りない量を足します。

初めての寄木。

続けて頭部をつけるための斜めの面を作ってから頭部の量を寄木。この時はチェーンブロックを使ってますね。最初はやれることはなんでもマンパワーでやってたと思います。

頭部の量もくっつきましたね。

ボンドが乾いたらチェーンソーで荒取りします。

チェーンソーで溝を入れた後に鑿で割り落としていきます。

あとはひたすら削っていきます。

帽子の鍔もつけました。

とにかく全てが初めての木彫はワクワクでいっぱいで、やること全てが難しくて上手くいかず、それが僕にとっては感動的なことでした。
基本的に上手くいかないことをどう工夫したら上手くいくかを考えてトライアンドエラーを重ね、なんとか乗り越えた時に得られる達成感は他では得られない絶対的なものがあります。
人間って成長することに喜びを感じる生き物なんだというのを強く実感します。
なんか文章にしてみるとすごく単純なように見えますが、多分こういうのって理屈じゃないし、言葉で説明する必要すらないでしょう。完成した作品が全部伝えてくれるのだと思います。(今後作品の制作を続け、作品自体がレベルアップしていくことがその証明になると。まあそもそも誰かに伝える目的でやってないので自分自身がどう感じるかが全てですね。100%自己完結している世界です。)
だからすでに出来ることは結構どうでもよくて、むしろ出来ないことにぶつかった時にワクワクしちゃうわけですね。
初めての木彫は日々の制作が楽しくてしょうがなかったわけですが、気持ちが前のめりになりすぎて体の限界を超えてしまいました。。。
荒取りや寄木をしていたある日、膝裏がピリピリ痺れる感覚が出てきました。
今まで感じたことのない感覚。
最初の4、5日くらいは痛みはなくて、なんだろう、という違和感しか感じていませんでした。そして数日後、突然強烈な腰痛に見舞われました。
それもただ事ではない痛み。痛くて何も手につかない感じ。立っても座っても、寝転んでも関係なく、痛み止めも全く効きませんでした。
制作はもちろんストップです。レントゲンを撮ったら、椎間板ヘルニアになってしまったと判明。
重い寄木材の塊を手で持ち上げたり、色々無茶をしたせいで腰の椎間板(背骨)の間のクッションが潰れて中身が飛び出てそれが神経に触れることで激痛を引き起こすアレです。
ヤバイ痛み(神経を突き刺すような)の原因がわかり、今後の対応が迫られました。
1、頑張って我慢して放置→半年から1年くらい待てば体内のマクロファージが飛び出た部分を食べて無くなる。
2、手術して物理的に取り除く(絶対にミスはないとは言えず、万が一ミスしたら歩けなくなる→車椅子)
まあきついけど我慢すればリスク取らなくて済むならと2ヶ月くらいは仙骨ブロック注射(お尻の骨から麻酔を注射して神経に直接麻酔薬を送る→全く痛く無くなる→5時間くらいで元に戻る&週2回までしか打てない)とかしつつ、なんとか耐えていましたが、当時すでに学校や予備校で講師をしていて、指導や生活にも支障が出ていたので手術を決意。
といってもすぐに手術、とはいかないし、手術後もリハビリがあったりと完治までには相当な時間がかかりました。(取り除いた後も神経そのものが受けたダメージが回復するまで1年くらいかかった→1年くらいずっと痛みは続いた)
病室で同室になったおじさんは運送業をしていてヘルニアになってしまったそうです。それもかなり重度で歩けなくなってしまったそう。→手術、リハビリで復活。
ヘルニアはこれまでの人生で一番きつい痛みでした。。瞬間的な痛みなら盲腸とかも痛かったけど、それはすぐ手術だったので持続的ではないですからね。
ずっと痛い。痛みから逃げられない。という絶望は計り知れなかったです。
腰から下を切り離したい。と思うくらい痛かったです。
腰の弱さは人類が二足歩行を手に入れた代償である。
これを身をもって学びましたね、体は丈夫な方だったのですが、関係ないようです。
何もしてなくても上半身の重量が腰にかかってるのに、さらに重いものを持ったら腰が潰れるのは物理的に当たり前です。今ならわかる。
このあとは重いものを持つなどはかなり気をつけるようになりました。
でも重量挙げの選手とか、頭の上に荷物乗せてる異国の女性とかを見ていると心配でたまらなくなります。